平成12年(2000)から平成16年(2005)までの5年間、私達は文部科学省の科学研究費という研究活動費で、東アジアの印刷や出版の歴史、中国・韓国の文学や歴史、日本の絵画などを研究し、世界各国の人々と意見の交換をして来ました。今回、平成19年度日本学術振興会アジアアフリカ基盤形成事業の一環として伊達市にて日中韓及びニュージーランドの研究者によるセミナーを開くことに致しました。研究しているすべての内容を紹介することは、短い間では出来ませんが、東アジアの出版文化をめぐる研究を楽しい形で講義することといたします。東アジアの出版を中心とした文化に興味ある人には大変たのしい時間を過ごせるかと思います。 このセミナーとは別に、日ごろ調べているテーマに関する本と絵画と版画にちなむ展覧会を開くことになりました。「東アジアむかしの本のものがたり」展です。5日間の短い期間ですが、大学や研究所ではどのような活動をしているのかをみなさんに紹介するための展覧会です。1000年から300年ぐらい前までの本や絵、貴族の服などを展示します。セミナー、展覧会とも、入場無料となっております。また、一部の展示品は、手に取って見ていただくことも可能です。ぜひ、研究の一端にふれていただき、印刷文化から見えてくる東アジアの国々の文化交流、時代や国ごとの考え方の違い、技術の移り変わりなど、連綿と受け継がれた文化の歴史を感じていただく、というのが今回の企画です。
〒052-0000 北海道伊達市松ヶ枝町34番地1
併設展: 「東アジアむかしの本のものがたり展」 〒052-0022 北海道伊達市梅本町39番地30 TEL(0142)23-3535 特別講義・ギャラリートークを予定しています。 「東アジアむかしの本のものがたり」 東アジアの国々では、人々の考え方や気持ち、行動の記録を中国で発明した漢字を用いて次の時代に伝えて来ました。やがて、中国の文明を利用していたまわりの国々の人々は、日本ではかな文字、韓国ではハングル文字、ベトナムではベトナム漢字、モンゴルではモンゴル文字などというように、独自の文字を作り、自国の文化をより伝えやすくする工夫をしました。 東アジアの文明の発祥地となった中国では、人々がはじめに文字を記したものは、動物の骨とか青銅で作ったうつわでしたが、やがて紙の発明があり、紙や絹の布に書いた本が登場しました。これは、写本と呼ばれ、人の手で一つ一つ作るため、大変高価なもので、また数も少ないものでした。 10世紀になると、木版印刷という版画のように印刷する技術の導入があり、写本は印刷された大量の本に取って代わられます。 それから約千年の長い間、中国はもちろん、韓国や日本などのアジアの国々では、木版印刷によって先人の知恵を伝えて来ました。本は、時代を反映する鏡のような面を持っています。本は、時代や国によって同じ書物でありながら、内容が変わったり、綴じ方や表紙、使う用紙などが変わったりするなど、色々な特色が生まれています。アジア1000年の長い本の歴史を、実物の展示によって見てわかるようにするのが、今回、伊達市の伊達信用金庫二階ホール内に設ける展覧会です。アジアの本のふるさとである中国の宋・元・明・清・民国の各時代の様々な分野の本のほか、日本の鎌倉時代の写本(巻きもの)や室町時代の五山で印刷された本、また、本のさし絵と関係する絵巻なども展示しています。韓国で出された古い色刷の地図、大きな本などもありますし、チベット文字などの横長の本もあります。東アジアの印刷文明と比較すると、時代的には後になったヨーロッパの古い印刷物も併せて展示します。 なお、参考資料として、本を読み、また本を作ったかつての中国文明の担い手であった皇族や高級官吏のイメージ作りのため、その制服である龍袍(ロンパオ)、明清時代に印刷された紙幣なども併せて展示します。研究のための資料ですので、ビックリするお宝はありませんが、珍しいもの、あやしげなものなどがあります。 一般に、博物館などの展示品は触れることが出来ませんが、今回の展示会では、一部の原物を手に取って見ることも出来ます。 展示会場は、東アジアの本の歴史が読まずにわかるように、特色をつけて実物を展示しています。 @むかしの本の歴史コーナー いま、みなさんが読む本のご先祖は、いったいどのような姿や顔を持っていたのでしょうか。中国の宋代から元、明、清、そして中華民国までのちょっと「くたびれた」本をならべ、1000年の歴史を示します。中国の王朝名をとって、宋代に出版された本を宋版などと呼び、以下、元版、明版などと出された時期を書名のあたまにつけて、本の特徴とする場合もあります。展示品は、書名の前に時代タイトルをつけて出版時代の区別をしています。 パネルでは、中国と周辺の国々がどのように本を印刷し出版したのかについて、読んで理解できるようにしています。宋版の仏教の経典、元版の儒教の詩経、明の小説三国志演義の原本などが出ます。例えば三国志演義などは、同じ本でも出版社や時代によって話が異なる部分があります。 むかし出された本には、お父さんやお母さん、兄さん姉さん、妹弟たちといったまるでわたしたちの家の家族のような、大小さまざまの本、美しい本、可愛い本など、工夫がこらされた色々な本があります。また、木版印刷のほか、石版印刷や活字印刷など印刷方法、技術から区別される本もあります。そのような千差万別のアジアむかし本も陳列しています。 Aむかしの本が示すアジア友好のコーナー 中国の漢字文化を受け容れたアジア諸国は、活発に文化交流を行なって来ました。人々は中国で出版された本を輸入したり、その翻訳を行なったりして先進の情報を得ようと努めていました。日本の五山の出版本、韓国で出された本、モンゴル仏教のお経、ベトナムの本など。16・17世紀頃ヨーロッパ人が見た中国風景の本もあります。もっとも、本の世界でも、国際交流という友好の中にも、競争、パクリなどもあり、生々とした商人魂がうかがえます。 中国の龍袍という皇族・高官の礼服なども展示します。どなたでも見学が自由にできますが、静かに本を見ましょう。
このセミナーは日本学術振興会アジア・アフリカ学術基盤形成事業により、東北大学東北アジア研究センターを拠点として実施されます。
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最終更新日 2007/10/18 |