【 研究意義 】
今日、東アジアの主要な古文献は、木版・古活字本等の出版物によって保存・伝承・継承されている。古文書、作者自身の原稿及び原本に近い写本は、比率から見ればごくわずかである。
その出版物も、実に宋刊本・元刊本・明刊本そして清刊本に加え、朝鮮本、和刻本、安南本などのバリエーションがあり、刊本から写本の生成という経路も日常的であった。出版文化研究の深化によって、古写本から刊本が登場する経緯、刊本自体の伝刻経路、善本と普通本(流布本)の区別がなされ、研究上の底本たる現代の活字による校本やコンピューター用の正確なデータを提供することが可能となり、文献方面から東アジア社会の文化研究の基盤が整理されることとなろう。具体的には、以下(1)〜(8)という学術上の成果がもたらされると考えられよう。
(b)社会に対する貢献
すべての学術研究は、社会や人間生活に豊かで平和な状況をもたらす義務がある。物質面に大きな進捗を見せた20世紀は、一方で人心の荒廃も招いた。人文科学は人間の精神や想像力、協調性、相互理解などの目に見えない文化を構築する。次代に強く求められると思われるのは、この方面からの精神文化の安定性であり、人文科学の推進が、更なる豊かな精神文化及び物質文化の発展をもたらすと確信される。
本研究は学術研究の基本を提供するもので、それ自体すでに社会に還元される内容である。と同時に、本研究は、目下、日本の社会、教育、そして教育政策において改善を進める図書館のあり方に幾つかの直接的働きかけをし、互恵的な成果も挙げようと努める。具体的には以下(1)〜(3)に列挙される。
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