■成果
中国の版画は、単独で流布するよりも、書籍に添付された形の方がなじみ深い。
唐末・五代の仏教版画をはじめとして、宋元明清歴代の木版出版物には、様々な版画が付刻され、今日なお我々の眼を楽しませてくれる。
しかし、出版文化史における版画に関する分析は十分な形で進んでいない。町田市が市制30年記念・日中友好条約10年記念で行なった中国版画2000年展において刊行された
『中国古代版画展』(町田市立国際版画美術館,1988)は、その時代の研究成果を一望するに足りるカタログであるが、このカタログに収められた研究展望による限り、東アジア文化研究において版画史が他の研究ジャンルよりかなりおくれている感は否めない。
今後、中国絵画と版画との関係を出版史との係り合いの上で研究し、更にヨーロッパ版画史と絵画史そして出版史との関係から比較検討することが求められよう。(磯部 彰)

列國志傳

滝沢馬琴の出版関係書状
|