平成19年度
<研究課題名>
近世における東アジア出版文化
(East Asian Publishing Culture in Late Ming)
<平成19年度の研究計画>
北宋に始まった木版出版による知識の普及と社会体制の変化は、元明前期を過ぎ、明中期の嘉靖年間に一大転機を迎えた。今日に到る東アジアの社会構造はこの時代に決定的な変貌を遂げた。社会体制のみならず知識伝達に重要な役割を果たした現存する多くの中国の典籍類や日本・朝鮮の覆刻本がこの時代の産物という特徴も持つ。従来はほとんど重要視されなかったこの嘉靖時代を視点に入れ、近世東アジアにおける情報文化社会形成を出版システム、社会状況、国際交流、資料データから中国・日本・朝鮮を主とした状況分析を行ない、後期封建社会成立と国情の相違の形成を分析する。
〔付帯事業〕
本共同研究の付帯事業として、東アジア善本の複製を作成して、その保存と利便性を図る。平成19年度は、三国志演義の費氏刊本等の複印を行なう。
<実績の概要>
共同研究では、中国側の拠点の復旦大学が進める古代文学研究センターの「現代的視野のもとでの中国古典文学及び評論学」研究に、日本・韓国両拠点が分担する形で参加し、8月に研究成果を発表した。一方、日本側拠点が主催するアジア・アフリカ学術基盤形成事業共同研究「明代後期における東アジア出版文化」については8月に日中韓三国で意見交換と資料調査を上海・昆山で実施し、9月に北海道伊達市においてセミナー実施時に意見・情報交換をした。更に、11月韓国ソウルの高麗大学校にて、日韓の出版文化研究情報を交換し、共同研究の参加メンバーの調整などを実施した。
<成果>
「明代後期における東アジア出版文化」という共同研究の大テーマのもと、中国復旦大学側が開いた国際会議で、日本側2人、中国人側1人、韓国側1人が共同研究に関連するテーマで研究発表をした。そして、上海図書館及び昆山市で中国古典籍や崑曲に関する資料調査を共同で実施した。その結果、江南のカラー印刷技術や演劇文化が、清代初めに北京へもたらされ、清代の宮廷演劇の一端が構築されたこと、その北京演劇文化が韓国などの冊封国へ波及したらしいことなどが、資料や現地調査で多少なりとも判明し、新研究課題の展望を開くこととなった。
平成20年度
<研究課題名>
明代後期における東アジア出版文化
(East Asian Publishing Culture in Late Ming)
<平成20年度の研究計画>
北宋に始まった木版出版による知識の普及と社会体制の変化は、元明前期を過ぎ、明中期の嘉靖年間に一大転機を迎えた。今日に到る東アジアの社会構造はこの時代に決定的な変貌を遂げた。知識伝達に重要な役割を果たした多くの中国の典籍類や日本・朝鮮の覆刻本が、この時代の産物という特徴も持つ。従来はほとんど重要視されなかったこの嘉靖時代前後における情報文化社会形成を出版システム、社会状況、国際交流、資料データから中国・日本・朝鮮を主とした状況分析を行ない、後期封建社会成立と国情の相違の形成を分析する。
本研究の進展によって、出版が東アジアの帝国的な性格形成に一定の役割を果たしていた点が明らかにされる。これは、ヨーロッパの印刷文化が市民社会の形成と相反的な役割を演じていたという点で注目に値しよう。
<実績の概要>
共同研究は、近世東アジア世界の出版文化の特色とその社会史的意義の分析に主眼を置き、とりわけ印刷文化が社会構造に多大な影響を及ぼして知識人社会を生み出し、近現代までその流れを受ける明代嘉靖期(日本室町末、朝鮮朝中宗王)から崇禎末・清初期までの出版文化のあり方を中心に進めている。本年度は、小説・戯曲分野に重点を置いて分析を進めた。現地調査として、日中韓共同で浙江省富陽地区で製紙・印刷・出版に関する調査を実施した。研究組織は、単一組織として運営の円滑性を図り、分担という形で研究を進めている。共同研究の参加者は、(1)出版システム、(2)社会文化環境と出版、(3)社会規範と出版政策、(4)文化交流史上の出版文化、(5)文人と読書・蔵書、に関する各分担課題を最少一項目を視野に入れて検討している。研究の拡がりと情報入手を図るため、随時、研究協力者・院生の参加が出来るようにした。研究成果は各自専門誌もしくは専著で公開するか、もしくは最終年度に取りまとめる論文集に収めて公表する予定である。また、国内外の他の研究会や学会に参加して口頭での公表も奨励し、セミナーでも発表の機会を設けた。研究会は開催することにホームページで案内し、希望者を随時参加させて、研究域の拡大と若手研究者の育成を図っている。研究会は日本側の主催で7月に仙台で国際研究集会として実施し、9月上海においても参加者による研究会・共同調査を行なった。
<成果>
明代、出版活動は嘉靖年間に勃興し、隆慶を経て萬暦年間に到って盛期を迎えた。萬暦年間、出版の中で小説や戯曲は民間出版界の中心的出版物の一つとなり、競って小説の改編をした。本年は、その萬暦時代(朝鮮朝宣祖、日本豊臣時代)での(1)出版システム、(2)社会文化環境と出版、(3)社会規範と出版政策、(4)文化交流史上の出版文化、(5)文人と読書・蔵書という視点で各自が研究を進め、情報交換とデータ収集のためにパネルディスカッション、或いは現地調査を加えた。具体的には、中国長編小説の代表格である四大奇書、そして短編小説集の三言などを主とした建陽・南京・蘇州方面の出版活動に焦点を置き、萬暦時代、小説の出版は隆盛に達し、同時に建陽書肆も主要収入源とするようになった状況を検証した。この共同作業から、萬暦期の四大奇書や長編・短編小説、或は出版物を研究をする際、いかなる版本や社会環境に注意を払う必要があるのか、という点に理解が進んだ。
平成21年度
<研究課題名>
明代後期における東アジア出版文化
(East Asian Publishing Culture in Late Ming)
<平成21年度の研究計画>
北宋に始まった木版出版による知識の普及と社会体制の変化は、明中期の嘉靖年間に決定的な変貌を遂げた。知識伝達に重要な役割を果たした多くの中国の典籍類や日本・朝鮮の覆刻本が、この時代の産物という特徴も持つ。従来はほとんど重要視されなかったこの嘉靖時代前後における情報文化社会形成を(1)出版システム(2)社会文化環境と出版(3)社会規範と出版政策(4)文化交流史上の出版文化(5)文人と読書・蔵書の視点から中国・日本・朝鮮を主とした東アジア世界の展開について分析を行ない、後期封建社会成立と国情の相違の形成を分析する。
本研究は最終年度に入ったので、研究成果をまとめ、「東アジア出版文化研究」(3号)として単刊し、社会に公表する。そして、本研究論集を通して、出版が東アジアの帝国的な性格形成に一定の役割を果たしていた点が明らかにされ、ヨーロッパの印刷文化が市民社会の形成と相反的な役割を演じていたという点で注目に値しよう。
<実績の概要>
本事業の共同研究では、近世東アジア世界の出版文化に主眼を置き、とりわけ印刷文化が社会構造に多大な影響を及ぼし、近現代までその流れを受ける明代嘉靖期(日本室町末、朝鮮朝中宗王)から崇禎末を中心に進めてきた。研究組織は、単一組織として運営の円滑性を図り、分担という形で研究を進めた。参加者は(1)出版システム(2)社会文化環境と出版(3)社会規範と出版政策(4)文化交流史上の出版文化(5)文人と読書・蔵書、に関連する課題から、その一つに研究テーマをしぼり、東アジア諸国の個別の課題や状況を分析することで研究を進めて来た。韓国では、韓国学中央研究院や高麗大学校などで蒐集したデータを利用しつつ、本事業でのセミナーや研究者交流で得た成果を取り入れて3年間続けた研究成果をとりまとめた。共同研究の成果は、国際学会での発表や専門誌での公表のほか、主だったものは日本側コーディネーターが編集する『東アジア出版文化研究 ほしづくよ』に収録することとし、提出された論文は編集を経て、2010年に出版された。共同研究の関連資料の調査は韓国学中央研究院・高麗大学校・韓国国立中央博物館で実施した。共同研究には、国内外の学生も参加可能とし、論文等の提出も受けつけることとし、研究域の拡大と若手研究者の育成の役割も担った。
<成果>
北宋に始まった木版出版による知識の普及と社会体制の変化は、明中期の嘉靖年間に決定的な変貌を遂げた。知識伝達に重要な役割を果たした多くの中国の典籍類や日本・朝鮮の覆刻本が、この明時代の産物という特徴も持つ。従来は重要視されなかったこの嘉靖時代前後における情報文化社会形成を(1)出版システム(2)社会文化環境と出版(3)社会規範と出版政策(4)文化交流史上の出版文化(5)文人と読書・蔵書、の5つの視点から中国・日本・朝鮮を主とした東アジア世界の文化形成の展開について分担研究を行ない、後期封建社会成立と国情の相違の形成、読者層の拡大と社会体制の変革について、思想・文学・書誌・目録学・文化史などから明らかにした。そして、研究成果をまとめ、『東アジア出版文化研究 ほしづくよ』として出版し、研究者及び社会全体に公表した。本研究論集の出版以外、日中韓三国の研究交流や若手研究者の育成のためのセミナーや資料共同調査などの事業を通して、出版が東アジアの交流と相互理解、社会の変動と深く係ったこと、伝統芸能の継承や民族の形成などに一定の役割を果たしていた点が明らかにされたという点で、今後の東アジア文化研究に貢献する。また、日本・中国・韓国での研究拠点も確固とした形での組織運営が狩野となり、次の段階である若手研究者育成の研究拠点として発展して行く足がかりを得ている。
平成19年度
<実績の概要>
第1期にセミナー実施内容と開催地点を日本側で決定し、9月に北海道伊達市で「東アジアむかしの本のものがたり」というテーマで実施した。伊達セミナーでは、南北海道の一般市民や学生の参加を促すため、共催した伊達市噴火湾文化研究所を通して広報活動をする一方、日本側拠点のホームページなどでも周知を図った。同時に拠点校以外、北海道大学や北海道教育大学、一橋大学などの院生などへも参加を呼びかけた。セミナーと同時に共同研究やセミナーなどの研究活動を一般市民などに広く紹介するために、東アジア出版文化展覧会を別会場に設営し、現地ボランティアの協力のもとに、院生の古典籍実習を兼ねて5日間実施した。展示資料は、本プロジェクト全体に係わる古典籍やアジア諸国の資料など、多彩に亘り、ギャラリートークおよび展示資料解説も院生を含め毎日実施した。
<セミナー名>
JSPSアジア・アフリカ学術基盤形成事業:東アジアむかしの本のものがたり
(JSPS AA Science Platform Program: On the history of Printed Books in East Asia)
開催期間 |
セミナー:平成19年9月28日〜平成19年9月29日(2日間) 併 設 展:平成19年9月25日〜平成19年9月29日(5日間) |
開催地 |
セミナー:だて歴史の杜カルチャーセンター(北海道伊達市松ケ枝町34番地1) 併設展:伊達信用金庫本店2階コスモスホール(北海道伊達市梅本町39-30) |
【概要】
セミナーでは、東アジア郷村社会を中心に出版によって文化形成と知識層が拡がって行く状況を、中国・韓国・日本の参加者が各一人ずつ実証的に紹介し、講義を受けた参加者が自己の専門と照らしあわせて質問する形式で進めた。参加者は、講演者とその発表に対する批評・追加発言を兼ねたコメンテーター、更にセクションを統轄して発表内容を聴衆に適切に伝える座長兼中日両語の通訳を務めた。展覧会では、コーディネーター主導のもと東アジア出版史を見てわかるように工夫し、セミナー内容の実施研修も兼ねたほか、院生教育などにも活用して、参加した学生に資料紹介をさせた。
【成果】
中国では套印というカラー印刷によって文芸ジャンルの拡がりがもたらされたという新しい成果が示された。また、朝鮮では中国詩文集の再編集と出版により、独自の中国文化受容があったこと、日本でも伝統的な学問の担い手が出版によって飛躍的な拡大を見せた点が報告された結果、共同研究の一つの中心に15〜16世紀の出版システムの東アジア展開を置く見方が共有された。展覧会はテレビ・新聞にも紹介され、市民の関心を高めてセミナー参加を促すなど、セミナーを側面から援助した。
テキスト@ セミナー東アジアむかしの本のものがたり |
テキストA セミナー東アジアむかしの本のものがたり予稿集 |
平成20年度(2回開催)
<実績の概要>
本年度は、セミナーを日本と中国双方が1回づつ開催することとし、セミナーの内容は第1期に実施国のコーディネーター各自が企画して進めた。
日本では7月に仙台にて「近世日本の出版文化」という講演、「外国の日本文化研究の現状」という題目のパネルディスカッションを実施した。講演は中央大学・鈴木俊幸教授が行ない、座長・通訳・評論者を充当し、聴衆の便を図った。また、パネルディスカッションでは、座長を日本側参加者が務め、招待者の龔穎(中)、S.ブーテレイ(NZ)、E.ボイティシェク(ロ)、崔官(韓)各教授が自己の専門に応じて、日本文化・日本研究の状況を紹介し、それに伴って討論を実施した。本セミナー紹介のため、ホームページやポスターで周知した他、新聞などの情報欄を利用して広く参加者を求め、対象者の拡充を図った。この結果、研究者の他、院生・学生、一般市民などが多数参加し、当初の目標を達成した。
中国のセミナーは復旦大学側のコーディネーターである黄霖教授が企画進行の任を担い、9月に上海の復旦大学にて実施した。ホームページやポスターなどで周知を図ったこともあり、復旦大学の研究者、院生・学生の他日本及び韓国の留学生も参加した。研究発表は中国・日本の研究者の他、中国・韓国の若手研究者及び日本の院生が行ない、中国近代目録史及び朝鮮出版文化と文集、日本中世出版文化史についての発表とその意見交換を行なった。日本側からは日本出版文化史専門家も出席していたため、中国語の理解の問題解決のため、中国側に通訳を依頼して処理した。
セミナーのテキストは日本及び中国側でプログラム兼予稿集という形で準備した。
日本でのセミナーでは、東北大附属図書館の貴重書室を利用して資料の展示をし、日本側事業参加者の導引のもと東アジア古典籍研修を実施し、次代の研究者育成に努めた。
平成20年度 第1回セミナー(S−1)
<セミナー名>
JSPSアジア・アフリカ学術基盤形成事業:日本の出版文化研究
(JSPS AA Science Platform Program:A Study of Japanese Publishing Culture)
開催期間:平成20年7月29日
開催地:東北大学附属図書館2号館(仙台市青葉区川内)
<概要>
「外国人研究者が見たクールジャパン(日本文化)」という切り口で、「日本の出版文化」と「外国の日本文化研究の現状」を討論テーマとする。セミナーは3セクションから成り、セミナーAでは江戸の出版文化と文化形成との関連について講義形式で進める。セミナーBは中国・韓国・ニュージーランド・ロシアの日本研究による日本文化研究をめぐるパネルディスカッションで、学生を主な対象とする。セミナーCは出版文化論に関連した東アジア資料展覧会を見学しつつ、古典籍の扱い方などを実習する形式をとる。セミナー用テキストはプログラムに織り込んだものを使用する。
仙台セミナーでは、若手研究者や学生が出版文化を通してアジア文化研究に関心を懐くことを目的に、全体のプログラム構成を行った。プログラムでは、近世中国と日本の出版文化を取り上げ、小説をめぐる出版の講演及びその評論、パネルディスカッション方式による小説出版が文化史上に果たした役割と影響をめぐる意見交換を行った。セミナー経費による参加者は、講演者もしくは座長、評論者を務める一方、会議運営を担当する実行委員会、当日のセミナー運営を担当するセミナー運営部会それぞれに所属し、研究発表・セミナーなどが順調に進行することに務めた。
<成果>
若手研究者や院生・学生が文化研究、出版史関連分野研究に関心を向ける時、その研究の着眼点や方法について、外国人研究者の着想を借りて新しい視野を開くことができた。また、セミナー内で紹介される諸外国での研究状況や環境を知ることによってグローバルな感覚を身につけ、将来的に異文化理解に抵抗感なく入ることが出来た。セミナー全体からは、国際的ネットワークが拡大するとともに、日常接し得ない奈良平安の写本や宋元明刊本の書籍の扱い方などを体得できた。
中国及び韓国・日本・ニュージーランド・ロシアなどの第一線で研究活動をする研究者による出版社と編集者、書誌的形態の変化、日本・韓国の出版についての講演・評論及びパネルディスカッションを通して、中国近世出版文化が東アジア文芸の展開に大きな影響を与えた点を、具体的に理解することが出来た。4名の外国人研究者の日本文化研究をめぐるパネルディスカッションで取り上げた研究視点は、当日多く参加した学生が専門課程へ進級する際、文化研究の着目点に対するアドバイスとなった。セミナーによる東北大所蔵古写経、日中韓の古刊本・絵巻類の研修見学では、文化研究での原典が持つ重要性を体得する機会となった。
ポスター
プログラム |
予稿集 |
(東北大学附属図書館2号館4F貴重書室)
東北大学善本
第1展示―しぶさのなかに永久の輝き―
〈古経の世界―心の書物・本の源流〉
(1)奈良平安写経―安寧への模索―
1 | 虚空孕菩薩経(光明子願経) |
2 | 神護寺経(大智度論) |
3 | 摩訶般若波羅密多心経(伝光明皇后経、鳥下絵装飾経、11C) |
4 | 妙法蓮華経(奥州藤原氏願経) |
5 | 摩訶般若波羅密多心経(隅寺心経) |
6 | 持心経(光明子願経) |
(2)経塚―未来世界への経典―
7 | 銅板・長安寺法華経(12C) |
(3)印刷経典―万人の救済への夢―
8 | 法隆寺・百万塔・根本陀羅尼経 |
9 | 中国・北宋 一切経音義 崇寧2年刊(開元寺版) |
10 | 元・法苑珠林(普寧蔵高麗人李允升・尹氏願経、元刊) |
14 | 永楽北蔵 |
(4)東アジアの仏教世界
(1) | 韓半島(朝鮮半島) |
11 | 高麗・紺紙金字妙法蓮華経(7巻本第4、14C) |
12 | 高麗・白紙金字妙法蓮華経(7巻本第6、14C) |
(2) | チベット(西蔵) |
13 | 西蔵大蔵経デルゲ版経 |
(5)民間信仰―中国アジアの人気(ホットな)宗教
15 | 華厳五十三参宝巻(清・康熙刊) |
第2展示〈アジア古刊本・写本〉
(1) | 中国 |
16 | 文選(李善注本、明中期刊) |
17 | 山水争奇(明刊) |
(2) | 韓国 |
18 | 南史(朝鮮朝明宗嘉靖25年刊内賜) |
19 | 世説新語(朝鮮古活字本) |
20 | 西序書目草本(朝鮮朝写本) |
第3展示〈アジア物語の世界―これがフィクションだ〉
(1)中国のものがたり
(1) | 演義小説―フィクションで知る中国の歴史、夢が少々まざります |
21 | 開闢演義(崇禎8年麟瑞堂刊) |
23 | 三国志伝(萬暦48年与畊堂費守斎刊) |
24 | 三国全伝(萬暦24年誠徳堂熊清波刊) |
25 | 唐書志伝(周氏大業堂刊) |
(2) | 神怪・人情小説―想像力から現実的なはなし |
26 | 李卓吾先生批評西遊記(明刻本、朝鮮朝朴氏旧蔵) |
27 | 韓湘子全伝(九如堂刊) |
28 | 西湖二集(明・聚錦堂刊) |
29 | 剪燈叢話 |
(3) | 演劇本―えそら事での人生いろいろ |
30 | 西廂記(萬暦20年熊龍峯刊) |
31 | 清・内府鈔本如是観等四種(昆腔) |
(2)日本のものがたり
22 | 源氏物語 |
第4展示〈中国絵巻雕像の世界〉
32 | 清明景物図巻 |
33 | 仕女図巻 |
34 | 西遊記図巻 |
35 | 猪八戒像 |
36 | 金元戯曲レリーフ |
平成20年度 第2回セミナー(S−2)
<セミナー名>
JSPSアジア・アフリカ学術基盤形成事業:東アジア出版文化の研究
(JSPS AA Science Platform Program:A Study of Publishing Culture in East Asia)
開催期間:平成20年9月21日
開催地:復旦大学(中国 上海市)
【概要】
上海セミナーでは、中古から近世に至る出版物の特徴と文化及び社会との係わり合いについて検討し、中国側研究院生・若手研究者の教育カリキュラムを日本及び韓国側からサポートする点に主眼を置く。同時に、日韓の若手研究者・院生による発表と指導の場も兼ねる。セミナーでは、中日韓の研究者による六朝・唐宋・明清及び近代の出版と文化の関係について取り上げる。日中の院生による研究報告では、学位論文の構想の一部分をテーマとする内容とし、参加研究者による指導を実施する。セミナーに合わせて、日中韓の研究者交流及び共同研究の機会も設定し、多角的な研究情報の交換と共有を図る。
上海セミナーでは、中古から近世に至る出版物の特徴と文化及び社会との係わり合いについて検討し、中国側研究院生・若手研究者の教育カリキュラムを日本及び韓国側からサポートし、同時に、日韓の若手研究者・院生による発表と指導の場も兼ねた。セミナーでは、中日韓の参加研究者による六朝・唐宋・明清及び近代の出版と文化の関係についての講義、司会進行などを担当した。日中韓の若手研究者院生による研究報告では、参加した院生が会場設営などに協力するとともに、参加研究者による指導を受けた。セミナーに合わせて、日中韓の研究者交流及び共同研究の機会も設定し、多角的な研究情報の交換と共有を図った。
【成果】
日本出版文化研究について、中国・韓国側研究者は多くの情報を持ちあわせていない。今回のセミナーでは、日中交渉史でも出版が中心的役割を果たした南北朝・室町期の出版文化を日本側が紹介することにより、中国・韓国側にとって覆刻本の持つ情報、或いは貸本文化、識字率問題に対して、新しい視野が開かれた。一方、中国出版史や朝鮮朝刊刻事業に関して、日本側が乏しい知識しか持ち得なかった分野に新しい知見や情報を持つことになった。セミナー全体を通して、同じ印刷文化を共有しつつも、進士・両班・武士という性格の異なる知識層が出版文化にいかに係わり、独自の文化を形成したかという重大な点を、日中韓三国研究者の意見交換と相互比較研究によって理解できる可能性を持った。院生・若手研究者の研究報告では、三国の研究者による助言・指導によって、将来の学術を担う院生などがアジア的視点で研究手法を体得する機会を持った。
中国での古典文学作品の出版及び近代書誌研究の新方式、韓国での中国教養文学集及び類書の覆刻とその影響、日本近世における中国書輸入による文治体制の形成という三国の文化交流に主眼を置いた講演を通し、日中韓三国の出版文化共同研究への展望が拓けた。また、復旦大学の学生ばかりではなく、韓国・日本からの留学生も参加し、日本側が日本学術振興会のもとで進める出版文化研究プログラム内容や、東アジア研究に出版及び書籍のもつ重要性への理解が進み、次代の研究者育成に国際的レベルで取り組むことが出来た。
上海セミナー予稿集
平成21年度
<実績の概要>
本年度のセミナーは、韓国高麗大学校において、中国学研究所の協力を得て開催し、中国の漢籍の韓半島での受容や朝鮮朝出版及び印刷形態を主要なテーマとして、韓国・中国・日本3ヶ国の研究者がセミナー講師を務めた。セミナーでは講義形式に止まらず、出版文化論に関連した東アジア出版文化史のVTR「アジアむかしの本のものがたり」(ハングル訳付)を放映し、参加した高麗大学校や中央大学校の院生・学生などが自由に見れるようにした。また、高麗大学校の配慮で、資料の見学会を高麗大学校善本室及び韓国学中央研究院で開き、それぞれの会場にて高麗大学校及び研究院の講師の説明を受けながら、韓国の古典籍の取り扱い方や特徴など、実物に即して体験する実習を兼ねた善本調査プログラムを実施した。
<セミナー名>
JSPSアジア・アフリカ学術基盤形成事業:東アジア出版文化の研究
(JSPS AA Science Platform Program: A Study of Publishing Culture in East Asia)
開催期間:平成21年10月10日
開催場所:高麗大学校(韓国 ソウル)
【概要】
高麗大学校でのセミナーでは、中国出版文化を韓半島ではいかに受容したかについて、日本・中国の同時代の状況と比較しつつ、仏典の形式から、韓国側から新羅時代の印刷が唐と並んで行なわれたことを、日本側から江戸時代の狂歌の流布を、また、中国側は評点本の中朝交流について講演し、その通訳を日本及び中国・韓国の参加者が行なう形でセミナーを進めた。日本側は日本から携帯した狂歌文献・版木の紹介とその質疑に応じた。パワーポイントの準備に日中の院生佐々木聡、曾?皇が当たり、会場運営は高麗大学校の若手研究者と院生複数で担当した。セミナーの最後に3年間の活動総括について日中韓のコーディネーターから報告があり、Susan Boutereyから今後の方針への意見が出された。
【成果】
東アジア出版文化関係のセミナーからは、参加した研究者全体に研究の新しい視野を開くものとなった。とりわけ、韓日中それぞれの文化的特色とも言える新羅の出版、狂歌文化、明代評点文化という視点での討議から、新たな文化研究の貴重な情報を入手することが出来た。同時に、日中韓の若手研究者や大学院生は、セミナーから東アジアの印刷出版文化の研究状況が体得できた。また、その相互の情報・意見交換を通して、交流のきずなを深めた。韓国・中国側の提案で、AAP終了後も本連携を維持し、出版文化研究を持続することになった。また、3年間の本形成事業の成果をまとめて出版することになった。今回、参加者は、上海やソウル、日本を拠点に文化研究をするネットワークを手にすることも出来て、今後、中国や韓国、及び日本での研究活動に寄与すると考えられる。
セミナー予稿集
日本学術振興会の委託によるアジア・アフリカ学術基盤形成事業「東アジア出版文化国際研究拠点形成及びアジア研究者育成事業」は、平成19年(2007)4月に開始されてから3年が経過し、平成22年(2010)3月でその委託研究活動が終了することになりました。本事業は、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「東アジア出版文化の研究」で構築した東アジア出版文化をめぐる研究基盤を発展させて国際化したプロジェクトであり、当初、日本と中国・韓国3ヵ国に出版文化を研究する拠点を設け、その連携と拡張を目指したプロジェクトです。
3年間の事業のもとで、研究活動は大きく進展し、多方面に亘ってその成果を収めることができました。今回、日本・中国・韓国・台湾・ロシア・ニュージーランドの参加者の様々な研究成果、セミナー当日のパネルディスカッションなどを集成し、アジア・アフリカ学術基盤形成事業の成果の一端として出版しました。その内容の多様性・豊富のさまから、天つ空にきらめく星が学術の井に映るがごとしという意味で、「ほしづくよ(星月夜)」と名づけました。過去に刊行した一連の『東アジア出版文化研究』(第1 号:にわたずみ「潦」、第2 号:こはく「琥珀」)に続く研究論集です。
『東アジア出版文化研究 ほしづくよ』
日本学術振興会の委託によるアジア・アフリカ学術基盤形成事業「東アジア出版文化国際研究拠点形成及びアジア研究者育成事業」は、平成19年(2007)4月に開始されてから3年が経過し、平成22年(2010)3月でその委託研究活動が終了することになりました。本事業は、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「東アジア出版文化の研究」で構築した東アジア出版文化をめぐる研究基盤を発展させて国際化したプロジェクトであり、当初、日本と中国・韓国3ヵ国に出版文化を研究する拠点を設け、その連携と拡張を目指したプロジェクトです。
3年間の事業のもとで、研究活動は大きく進展し、多方面に亘ってその成果を収めることができました。今回、日本・中国・韓国・台湾・ロシア・ニュージーランドの参加者の様々な研究成果、セミナー当日のパネルディスカッションなどを集成し、アジア・アフリカ学術基盤形成事業の成果の一端として出版しました。その内容の多様性・豊富のさまから、天つ空にきらめく星が学術の井に映るがごとしという意味で、「ほしづくよ(星月夜)」と名づけました。過去に刊行した一連の『東アジア出版文化研究』(第1 号:にわたずみ「潦」、第2 号:こはく「琥珀」)に続く研究論集です。
編 集 | 磯部彰 |
発行者 | 日本学術振興会アジア・アフリカ学術基盤形成事業「東アジア出版文化国際研究拠点形成及びアジア研究者育成事業」チーム(代表 磯部 彰) |
発 行 | 2010年3月31日 |
頁 数 | 423頁 |
平成22年3月31日を持って、アジア・アフリカ学術基盤形成事業「東アジア出版文化国際研究拠点形成及びアジア研究者育成事業」の3年間のプロジェクトが終了しました。
本事業は、東北大学東北アジア研究センターの共同研究を代表するプロジェクト研究「東アジア出版文化国際研究拠点の形成」という位置づけにもありました。今後、同様に東北アジア研究センターの新ユニット「東アジア出版文化研究」に継承され、ひきつづき研究拠点を設け、若手研究者の育成などにも力を注ぐことになります。
なお、この研究の報告等については、以下の日本学術振興会のHPにも掲載されています。
http://www.jsps.go.jp/j-aaplat/10ichiran_aaplat2.html