事業・研究の概略

アジア・アフリカ学術基盤形成事業は、日本学術振興会(JSPS)が、日本でのアジア・アフリカ研究の拠点を設立するために資金援助をする研究助成である。
 2007年から3年間、東北大学が「東アジア出版文化国際研究拠点形成及びアジア研究者育成事業」という課題で、JSPSの委託を受けて事業を実施する。
 実施に際し、日本以外、共同研究などを推進するため、中国復旦大学並びに韓国高麗大学校にも代表者と拠点を置き、三ヶ国で共同研究、東アジア出版文化に関するセミナー、及び将来の研究プロジェクトや共同事業の構想を話し合う研究者交流を、毎年、日中韓の相互で行なうことになっている。

研究全体の目標

本事業に参加する日中韓三国のメンバー及び協力外国人研究者によって、特定領域研究「東アジア出版文化の研究」で構築したネットワーク体制に基づき、次の目標を立てて、研究交流を行なう。

@ 明代嘉靖年間前後を中心とする近世東アジア出版とその文化背景及び社会への影響についての共同研究の実施と、その成果を含めた東アジア出版文化事典の構築を図る。
A 東アジア出版文化関連の研究者育成のために、専門家の講演を織り込みながら、東アジア出版文化セミナーを日韓中三国で開催する。加えて、東アジア世界で出版された古典籍を展示する出版文化展を開き、一般市民へのアジア出版活字文化の資料公開と啓蒙活動をする。また、若手研究者や学生に歴史文化資料の扱い方及びその利用と保存の実習を行なう。
B 共同研究及びセミナー実施のため、当該研究機関以外の研究者も招へいし、木版を主とする出版物とその文化をめぐるセミナーを実施する。特定領域研究「東アジア出版文化の研究」で交流を積み重ねた国内外のメンバーと連絡をとりつつ、恒久的な東アジア出版文化国際学会を樹立することを図る。
C 東アジア出版文化研究の資料の内、内外で要望の高い善本資料を複印し、資料公開と保存事業を推進する。
D セミナーと並行して、東アジア出版の国際シンポジウムを開催し、本事業での成果を国内外に発信する。また、既存のホームページを改めて、研究情報の発信及び情報の集約を図る。

交流の実施要項

運営組織

  • 本事業の推進のために、日中韓3国に国別研究代表者、拠点及び連絡事務室を設ける。
  • 日本・中国・韓国三国間で実施する共同研究課題の細目と日程の調整。共同研究の開始へ向けて班員の役割の分担を定める。
  • 本事業の推進及び事業終了後の更なる研究協力体制の維持のために、大学間学術交流協定を利用し、若手研究者育成のための交流や東アジア出版文化研究の未解決課題に共同で取り組む。本事業紹介のためのホームページ開設に向け、担当者を配置する。

各交流の目標

共同研究

@ 本事業の共同研究では、近世東アジア世界の出版文化に主眼を置き、とりわけ印刷文化が社会構造に多大な影響を及ぼし、近現代までその流れを受ける東アジア近世期を中心に進める。
A 研究組織は、単一組織として運営の円滑性を図り、本プログラム参加者で研究を進める。
B 検討テーマは(1)出版システム(2)社会文化環境と出版(3)社会規範と出版政策(4)文化交流史上の出版文化(5)文人と読書・蔵書などを設定し、随時、日中韓及び研究協力者・院生の参加も可能とする。
C 研究成果はホームページや論文集の形で公開することとし、国内外の他の研究会や学会と協力する。
D 研究会には、制限を設けず、随時希望者を参加させて、研究域の拡大と若手研究者の育成を図る。

セミナー

@ セミナーは、東アジア出版文化の特色に焦点をあてて、新学問領域としての研究を深化するために実施するが、同時にリカレント教育の側面を取り入れ、対象を幅広く設定して実施する。
A セミナーの講師は、共同研究の研究集会に招へいする研究者に講演を依頼し、対象者ごとテーマを決めて実施する。セミナーは東アジア各国の古典籍研究と印刷史をテーマとし、単なる講義形式に止まらず、出版文化論の共同研究成果に応じた東アジア印刷資料の展覧会を開き、会場にて古典籍の取り扱い方や特徴などを実物に即して体験する実習を兼ねる。
B セミナー用のテキストは事前に提出された予稿集を印刷して用いる。
C セミナーの期間中に、招へい研究者や参加研究協力者などと次年度のセミナーテキストの企画を検討する。

研究者交流

研究者交流は、3段階で実施する。

@ 第1ステージは、共同研究・セミナーの実施の具体的手段を整え、中国・韓国での拠点設置を目的とした実務的交流に中心を置く。
A 第2ステージは、東アジア出版文化研究国際拠点及び東アジア出版文化学会構想の具体化を目指した研究者交流で、研究協力者の招へいと派遣を行ない、東アジア出版文化方面の情報交換を行なう。
B 第3ステージは、日本側参加者を主として東アジア出版文化関係資料調査及び関連国際学会へ派遣して研究発表や本事業を紹介することを目的とするものである。国内での研究者交流は必要に応じ、随時実施する。