〔中国風俗シリーズ(1)〕
春も中頃になると、新緑の芽吹きとともに暖かな気候となり、晴れた日には郊外や野山へ出かけたくなる。そのような時候が清明節であり、現在の四月上旬に相当する。北宋時代の人々も、冬の厳しさから解き放たれて、春の一日を喜び楽しもうとしたのであろう。そのありさまを、張択端は『清明上河図巻』として描き出した。都の汴京らしき大都会に流れる河、その河づたいでくりひろげられる人々の生活がひろがる。
後世、『清明上河図巻』に倣った絵巻が多数描かれている。林原美術館には萬暦五年(1577)趙浙筆絵巻がある。ギャラリー展示の絵巻は仇英様式と言われているが、宋の都汴京のあり様を描いた「清明上河図」を、後世模写したもの。明の画家仇英の筆になる画巻を更に後の時代の人が模写した画巻であると思われる。筆画の時代や画家名は不明である。宋代の絵巻を手本としているが、北宋から時代を隔てた明末では、風物も異なるはずで、模写とはいいつつも、描かれた時代の感覚が反映されるであろうから、画家の眼に写るありさまは明後期の中国社会であろう。画中、草台と呼ばれる臨時の舞台で芝居が上演されたり、武芸の演習などが描かれる他、商店群の中に本を売る店なども細かく描かれる。
本図巻の名称は「清明景物図巻」とした。
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